top of page

2025.1104 火

2025年11月4日
読了時間: 3分

牛乳パックを

切って開きながら、

涙があふれていた。

はたから見ると

奇行のように思えるだろう。


ぼくは

飲み終わった

牛乳のパックを

切って開いて再利用している。

肉や色うつりのする野菜を

切るときにまな板の上に敷く。

これは

いつころからやっているのか

もうわからないくらい

むかしからの

自分のシステムになっている。


その作業をしながら

いつも想い出すことがある。

そのとき

いつもきまって

胸がチクリとしている。


ぼくが離婚をして

息子と二人暮らしになったころ。

19の彼が

中学生になったばかりだったか

小6だったころか

それくらいのときだ。

シングルファザーとして

気張っていた。全方向に。

自分がもし明日死んでも

この子が

社会でやっていけるように

ちゃんと教えなければいけない。

それも全方向で

とにかく

ちゃんとしなきゃで

その核に安心がなかった。


ある日、息子に

牛乳パックの切って開く作業を

手伝ってもらうことにした。

父親をしながら

主婦業を全力でやっていたので

家事のささやかなことから

小分けにするように

手伝ってもらおうと思った。


終わったよと

受け取った牛乳パックは

ガッタガッタの

ぐんにゃぐにゃ。

切りあとが、クソお粗末だった。


それを見たとき

こんなこともできないのかという

ガッカリ残念さと

こちらの頼んだことを

なげやりにやられたような

失望まじりの怒りになった。

その気持ちのまま

これはちゃんと言わねばという

正しさ全開で

息子を叱ってしまった。

もうやらなくていいとまで言った。

こんな仕上げをする奴は

将来、自分の居場所がなくなるぞ。

そんなことまで言った。

言わなければならないと

強く力んで律して

厳しく正義をふりかざした。


その記憶と後悔が

牛乳パックを切って開くとき

いつもチクリとしていた。

そのたび

心のなかで

ごめんなと問いかけて

作業をしていた。

そしてそのときも

懺悔のようなモードになって

なんなら

いつもより神妙に切り進めていた。


そして

こんな想いが込み上げてきた。

信じてあげられなかった、

信じてあげたかったのに。

せめて

そうなってしまった理由を

聞いてあげたかった。

聞いたつもりだったけど

彼はうまく答えられなかった。

それは

理由がなかったのではなく

ぼくの怒りに萎縮してしまって

言葉が出なかったんだよ。

言葉をふさいだのは、ぼくだ。


もしかしたら

専用のハサミが

ごついやつだったので

子どもの握力では

使いこなせなかったのかも。

彼は投げやりにしたつもりは

なかったのかもしれないのに

ぼくは、

聞いてあげることができなかった。


自分の怒りと悲しみで

大切な息子の

言葉を封じ込めてしまった。

ただ、聞いてあげられなかった。

ただ、聞いてあげたかった。

その想いを

救い上げたように

わかってあがることができたとき

心の奥から涙があふれていた。


牛乳パックを

切り開きながら

涙するおじさん。

俯瞰で見ると

やっぱり奇行じみている。

それでも

連休の午後の陽射しは

テーブルの上で

あたたかかくまわっていた。


今日もごきげんでありましょう。

最新記事

すべて表示
2026.1023 金

朝から でっけー虹を見たよ。 そんなことを昨日、 最後にちらっとふれたのですが、 とても見事なアーチでした。 伏見稲荷神社の帰り 見るまに天気雨になって その陽射しは真夏のようで ああこれは虹が出るぞと 感じた矢先のことでした。 ほんのいっとき。 粋なはからいをしてくれた。 そう感じました。 あまりにも自然に そう感じたもので 自分という人物は 見えないものに 大きな信頼を寄せているのを 再認識し

 
 
2026.1022 木

めっきりと 冷えが深まってきました。 さっぽろ。 事務所の大片付けが 進んできています。 memoのspaceは、 「おなかとことば」という 店にリニューアルするため この場所を 空っぽにしなければなりません。 着工の日程というか できるできないは、 融資の結果によるものが 大きいのですが もう動いています。 ギターやアンプもある。 気付けば、 仕事に関係ないものが けっこうあるのです。 おにぎり

 
 
2026.1021 水

どうだい  青空を  見ようじゃないか  胸をはって  友よ   情熱に  あふれていると  見栄をはって アンジーの 「マグマの人よ」という 曲の歌詞を抜粋しました。 1990年発売のアルバム 「窓の口笛吹き」の1曲目に 収録されている曲です。 大好きなバンドです。 リリース当時 高校生だったぼくは この歌を知ってから、 その後の人生のなかで 励まされた場面が いくつもあります。 高校生なんか

 
 
bottom of page